北欧の夏は来るのが遅く、去るのも早い。
まだ十分に温まらないうちに、もう涼しさが漂ってくる。
だから、ここの緑はいつも淡く、
薄い黄みを帯びている。
夜の十時を過ぎてやっと、空が暗くなり始める。
それでも、まだ暗くはない。
二時を過ぎると、
空がまた、ゆっくりと明るくなってくる。
人々は休暇に入る。
学校も、通りも、がらんとしてくる。
すべてが半歩遅れる。
草花だけは、声もなく静かに育っていく——
まるで時間を急いでいるかのように。
森の中を走るのが好きだ。
スマートフォンも、イヤホンも持たずに。
ただそのまま、あてもなく走る。
村上春樹が言うように、
「ただ周りの風景を眺め、
自分自身を見つめればいい。」
走っているうちに、
自分も風になって、
木々の影を抜けていく。
陽光が梢の隙間からこぼれ落ちてくる。
地面には、まだらに揺れる光と影。
ときおり、鳥の鳴き声が届く。
森を出ると、世界がふと広がる。
雲は低く、薄青い空に寄り添うようにゆっくりと流れる。
道路を車が走り過ぎる。
牧場では、数頭の馬が静かに草を食んでいる。
頭に浮かぶ思いも、あの雲のように、
流れてきては、また流れていく。
何度も森を出たり入ったりするうちに、
体がゆっくりとほぐれていく。
突き出た岩の上に立って、ひと息つく。
まわりの枝が風の中で静かに揺れている。
少し先に、薄黄色の菜の花が広がっている。
砂利の敷き詰められた小道を、坂を下って走っていく。
風が正面から吹いてくる——
その瞬間、
自分もその中に溶け込んでいくようだった。