フエルテベントゥラ

フエルテベントゥラの大晦日

Fuerteventura  ·  Nochevieja

カナリア諸島で最初に訪れたのは、
どこか静かで、少し荒れた空気をまとったフエルテベントゥラ島だった。
島じゅうが、長年の貿易風にゆっくり削られてきたようだった。
大晦日の夜。
町の中心はイルミネーションに包まれ、
通りには大勢の人が行き交っていた。
世界中から集まった、さまざまな肌の色の旅人たち。
その人波のなかに、子どもを連れた私もいた。
ふと顔を上げた瞬間、
三十代くらいの女性が目に入った。
質素な身なりに日よけ帽をかぶり、
腕には小さな飾り物をいくつも提げ、
通りを行き交う人々に売っていた。
一瞬、目が合った。
ただ、かすかに頷き、微笑んだだけだった。
言葉を交わすこともなく、
立ち止まることもなく、
互いにまた人波へと消えていった。
遠い大西洋の島で、
見知らぬ同郷の者どうしが、
喧騒のなか、ほんの束の間すれ違い、
そしてまた離れていった。